世界の基軸通貨であり、事実上の標準決済通貨であるドルの歴史も、決して平坦なものではありませんでした。
金本位制度とドルの兌換性
世界の基軸通貨であり、事実上の標準決済通貨であるドルの歴史も、決して平坦なものではありませんでした。
そもそも紙幣とは、もともと銀行もしくはそれに類似する機関によって発行された貴金属硬貨の預り証として始まりました。それが、政府によって通用力を強制されて、いまの形での紙幣となったといえます。細かくは、政府によって発行される紙幣と、政府によって認可された金融機関によって発行された紙幣がありますが、実質上の違いはほとんど無いといっていいでしょう。というより、その国の経済上の信用度のほうが問題になります。
ですから、金兌換制度もしくは金本位制度(あるいは銀)という、紙幣が金に対して一定の交換レートを保つ、という形で各国は紙幣の価値を維持してきました。
しかしながら第一次大戦後、相次ぐインフレやとくに大恐慌によって欧州各国では金本位制度の維持が困難となり、第二次大戦前には相次いで兌換性を停止し、管理通貨制度へと移行しました。
アメリカは、両大戦で本土を戦場としないで済んだこと(ハワイは例外ですが、もっともハワイの州昇格は59年の話であり、厳密な意味での合衆国=United Statesの一部とはいえません)、死傷者数を相対的に低く抑えることが出来たこと、結果として製造業が壊滅的な打撃をうけた欧州各国に武器その他を輸出できたことなどがあいまって、金本位制度の維持が可能でした。
これが、ドルが国際機軸通貨として躍り出た大きな要因のひとつです。
つまり、ドルを持っていれば、ドルは常に一定額の金との交換が保証されているため、各国共通の決済通貨として利用しやすいだけでなく、資産家や企業、はては国家までがドルを保有するようになりました。
何度も紹介していてあれですが、ソ連がベトナムに武器を売ったときの決済通貨もドルでした。
ところが、当のベトナム戦争の泥沼化・長期化(ベトナムでは第二次大戦以上の爆薬が消費されています。インフレ分のコストも含めれば、膨大な消費です)、日本を始めとする各国からの輸入の増加などによって、インフレに悩んでいました。アメリカでの(当時からすれば)豪華な暮らしを支えるために、ドルがアメリカから流れ出てしまったのです。
アメリカは、さまざまな金融政策(短期金利の上昇・賃金価格の抑制策・外国利子への課税・海外投資への規制・海外旅行の自粛呼びかけなどなど)を取りましたが、それだけでは足りませんでした。
イギリスなどと協力して、金プール制度という、金価格高騰が高騰すると金を売りさばいて高騰を抑える組織が発足しました。これによって、アメリカが金の必要量を維持できるようにし、金の兌換制度を維持するためです。
すでに国際通貨となってしまったドルの価値を裏打ちするのは、アメリカのドルを金と保障するという金兌換制度です。もし、金価格の高騰によって、アメリカが金とドルの交換を維持できなくなったら、銀行の引き出し騒ぎのような金融不安がおこります。ぶっちゃけ、みんなが持っているドルの価値が目減りして世界が困るわけです。
そんなみんなの努力を台無しにするように(意図的なものでしょうが)、とつぜんフランス政府が貿易代金を金で決済をすることを言い出しました。1970年のことです。ド・ゴール大統領のアメリカ嫌いがこうじてのことなのか、深い国家戦略の末なのか、たんにドルへの信頼を失っただけなのか、ともかくもこのフランスの政策によって、1971年にはアメリカの金保有量は危機的な状況になり、アメリカは金兌換制度を廃止します。
これは、当時のアメリカ大統領の名前を取ってニクソン・ショックと呼ばれますが、大統領がだれであれ、この流れには逆らえなかったといえましょう。
金兌換制度停止のショックは大きく、一時的にドル・金・各国通貨の交換レートを固定した固定相場制も試されましたが、これも73年には廃止されました。
西欧諸国は、変動相場制の時代へと突入しました。通貨戦国時代といってもいいでしょう。
これによってたとえば、比較的管理的な側面が強い日本でも円が比較的短期間に80円になったり140円になったりと大規模な変動がありました。
一方でこれは、世界がドルに対するさらなる依存を強めたといってもいいでしょう。
一部の国では、カレンシーボード制という、自国通貨の交換レートを対ドルで固定する方式を採用したりもしました。
つまり、金の変わりに、ドルが通貨の価値の裏打ちとなったというわけです。
しかしこれも、2001年の米同時多発テロにより開始されたアメリカの対テロ戦争によってアメリカへの求心力が失われたことにより、ユーロや円、そして人民元の存在感が増してきているわけです。
ここで、人民元は中国の経済発展に伴い、アジア圏での基軸通貨となるかもしれないという期待感があるわけです。
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